七光りを実力で覆した奇跡の名馬
過度な期待を背負わされた悲哀のアイドルホース
偉大な七冠馬シンボリルドルフを父に持つトウカイテイオーは、生まれながらにしてルドルフ超えの期待を背負わされていた。
3歳年末の中京デビュー戦を1番人気で快勝した後、シクラメンS、若駒S、若葉Sとオープン特別を連勝。そして迎えた皐月賞。なんと1番人気である。
無敗とはいえ、重賞勝ちもなく手薄なメンバーで連勝を重ねてきた馬に対する評価としては、過大である。そこには、父シンボリルドルフの七光りが見え隠れする。朝日杯3歳Sをレコードで勝った、リンドシェーバーを弥生賞で斬って捨てたイブキマイカグラ(阪神3歳S優勝)を差しおいての1番人気である。競馬サークルは、テイオーに人気とともに過大な期待を背負わせた。もはや、テイオーがルドルフを超えることは義務と化した。
そんなプレッシャーを吹っ飛ばし、テイオーはあっさり皐月賞を勝った。続くダービーも、それはもう本当にあっさりと勝ってしまう。マイカグラもレオダーバンも、テイオーの敵ではなかった。
三冠確実と見られたものの、骨折により菊花賞は不出走。勝ったのがレオダーバンで、2着がマイカグラだったことから、出走さえしていれば三冠馬だったはずという幻想は膨らんだのである。
ラストの有馬記念でついに父ルドルフ超え!
メジロマックイーンの土俵で完敗を喫した天皇賞(春)、ダイタクヘリオスとメジロパーマーの暴走ハイペースに巻き込まれて失速した天皇賞(秋)の2連敗で評価を落としたテイオーは、国際G1として初めて行われるジャパンカップに駒を進めた。ディアドクター、レッツイロープ、ユーザーフレンドリーといった海外の強豪を向こうに回し、テイオーは真っ向勝負で打ち負かし栄冠を手にした。
日本馬のJC優勝は父ルドルフ以来となり、国際G1でも日本馬が勝負になると認めさせた功績は偉大である。
体調を崩した次走の有馬記念を11着で終えると、また骨折が判明し1年の長期休養へと入り、ラストランの有馬記念を迎える。
1番人気は、同年の菊花賞を勝ったビワハヤヒデ。主戦の岡部幸雄騎手がテイオーではなくハヤヒデを選んだことからも、ハヤヒデ有利が圧倒的下馬評だった。テイオーは4番人気におされたが、複勝や馬連は売れず、応援の単勝馬券だけが売れていた。
メジロパーマーが平均ペースで引っ張るなか、テイオーは中団6番手。ハヤヒデはその前にいた。直線先に抜け出したハヤヒデに、テイオーが襲いかかる。ハヤヒデがひと伸びすると、テイオーもここまでかと思われた。
ところが、馬体を併せてからのテイオーの根性はすごかった。かわそうとするハヤヒデに食い下がり、半馬身前に出たところがゴールだった。
場内からは一斉に「テイオー」コール。負けた岡部も「負けた相手がテイオーでよかった」と言い、競馬サークルすべてがテイオーの復活を喜んだように思えた。あの一体感は、ルドルフですら味わえなかった。
あの瞬間、テイオーは父を超えたのだ。
父:シンボリルドルフ |
母:トウカイナチュラル(母父:ナイスダンサー) |
12戦9勝 |
主な勝ち鞍 |
91’皐月賞(G1) 91’日本ダービー(G1) 92’ジャパンカップ(G1) 93’有馬記念(G1) |
日付 | 開催 | レース | 頭数 | 馬番 | 着順 | 人気 | 騎手 | 斤量 | 距離 | 馬場 | タイム | 通過 | 勝馬 (2着馬) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1993/12/26 | 5中山8 | 有馬記念(G1) | 14ト | 4 | 1着 | 4人 | 田 原 | 56 | 芝2500 | 良 | 2.30.9 | 8-8-4-4 | (ビワハヤヒデ) |
1992/12/27 | 5中山8 | 有馬記念(G1) | 16ト | 5 | 11着 | 1人 | 田 原 | 57 | 芝2500 | 良 | 2.34.8 | 13-13-12 | メジロパーマー |
11/29 | 5東京8 | ジャパンカップ(G1) | 14ト | 14 | 1着 | 5人 | 岡 部 | 57 | 芝2400 | 重 | 2.24.6 | 4-5-4-5 | (ナチュラリズム) |
11/01 | 4東京8 | 天皇賞(秋)(G1) | 18ト | 15 | 7着 | 1人 | 岡 部 | 58 | 芝2000 | 良 | 1.59.1 | 3-3-2 | レッツゴーターキン |
04/26 | 3京都2 | 天皇賞(春)(G1) | 14ト | 14 | 5着 | 1人 | 岡 部 | 58 | 芝3200 | 良 | 3.21.7 | 8-9-3-2 | メジロマックイーン |
04/05 | 2阪神4 | 大阪杯(G2) | 8ト | 2 | 1着 | 1人 | 岡 部 | 58 | 芝2000 | 良 | 2.06.3 | 3-3-3-2 | (ゴールデンアワー) |
1991/05/26 | 3東京4 | ダービー(G1) | 18ト | 18 | 1着 | 1人 | 安田隆 | 57 | 芝2400 | 良 | 2.25.9 | 6-6-6-3 | (レオダーバン) |
04/14 | 3中山8 | 皐月賞(G1) | 18ト | 18 | 1着 | 1人 | 安田隆 | 57 | 芝2000 | 稍 | 2.01.8 | 5-7-4-2 | (シャコーグレイド) |
03/17 | 2中山8 | 若葉S | 10ト | 4 | 1着 | 1人 | 安田隆 | 56 | 芝2000 | 稍 | 2.03.6 | 5-2-2-1 | (アサキチ) |
01/19 | 1京都7 | 若駒S | 9ト | 8 | 1着 | 1人 | 安田隆 | 55 | 芝2000 | 良 | 2.01.4 | 5-5-2-2 | (イイデサターン) |
1990/12/23 | 5京都8 | シクラメンS | 9ト | 6 | 1着 | 3人 | 安田隆 | 54 | 芝2000 | 良 | 2.03.8 | 6-6-5-2 | (イイデサターン) |
12/01 | 4中京3 | 新馬 | 13ト | 2 | 1着 | 1人 | 安田隆 | 54 | 芝1800 | 不 | 1.52.9 | 9-7-5-3 | (カラーガード) |