横綱相撲でライバルをねじ伏せた最強ステイヤー
名勝負を持たない稀代の名ステイヤー
相手に格の違いを見せつけるのが横綱相撲ならば、サラブレッドの横綱は間違いなくメジロマックイーンである。マックイーンは天皇賞(春)を2連覇した、90年代前半の名ステイヤーである。3000m以上のレースなら、7戦5勝2着2回のほぼパーフェクトで、そのレースはまさに横綱相撲だった。
好位からレースを進め、3角すぎから先行集団を潰しにかかり、同時に後続に脚を使わせると直線はマックイーンンの独壇場。この横綱相撲を壊したのはライスシャワー1頭のみ(4歳時に負けたミスターアダムスには、翌年の天皇賞でリベンジを果たした)。
メジロライアン、ホワイトストーン、カミノクレッセ、メジロパーマーといったライバルたちは、マックイーンの強さの前にただただひれ伏すしかなかった。
マックイーンの横綱相撲は、じつは弱点の裏返しだった。池江調教師が「素質は弟(マックイーン)のほうが上。でも、勝負根性なら兄(メジロデュレン)のほうが上」と語るように、マックイーンは接戦にもろかった。ゴールデフェザントに後れをとったジャパンカップ、ダイユウサクに内をさらわれた有馬記念がそうだった。
勝つときはあっさり、そして負けるときもあっさりだったがために、マックイーンは名勝負のない名馬といわれた。
テイオーを負かした天皇賞こそマックイーンの真骨頂
マックイーンの土俵は、3000mを超える長距離戦にあった。菊花賞、天皇賞(春)、阪神大賞典はいつでもマックイーンの庭だった。
中距離が苦手なわけではなかったが、自慢のスタミナにものをいわせる横綱相撲は長距離戦でこそ見応えがあった。そんなマックの土俵に正面から殴り込みをかけてきたのが、トウカイテイオーだった。
骨折明けの大阪杯を楽勝したテイオー鞍上の岡部騎手は、「どこまで行っても一杯にならない。地の果てまで駆けて行きそう」と次走の天皇賞へ向けてコメントを出した。それを聞いたマック鞍上の武豊騎手は、「向こうが地の果てなら、こっちは天まで昇る」と応戦し、前哨戦の段階からレースが盛り上がるという今では考えられない盛り上がりを見せていた。
当日、1番人気はトウカイテイオーのほうだった。しかし、レースはマックイーンの独壇場だった。逃げるメジロパーマーを3角付近で捕らえると、一気に先頭に立った。いつもと同じく、自ら先行集団を潰し、後続に脚を使わせる横綱相撲である。
対するテイオーは、このマックの動きについていかざるを得なかった。このときのテイオーに、2着でいいという競馬は許されなかった。このままではマックの得意パターンにもちこまれてしまうのだから、テイオーは厳しい展開と知りながら、マックと同じように3角付近で先頭に並んでいた。
しかし、この展開になればマックに勝てるライバルはいなかった。脚を使わされたテイオーが直線でもがくのを尻目に、マックは2着カミノクレッセ以下に2馬身半差をつける完封勝利。これぞ横綱相撲という、王者の風格をまざまさとみせつけたのである。
父:メジロティターン |
母:メジロオーロラ(母父:リマンド) |
21戦12勝 |
主な勝ち鞍 |
90’菊花賞(G1) 91’天皇賞(春)(G1) 92’天皇賞(春)(G1) 93’宝塚記念(G1) |
日付 | 開催 | レース | 頭数 | 馬番 | 着順 | 人気 | 騎手 | 斤量 | 距離 | 馬場 | タイム | 通過 | 勝馬 (2着馬) |
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1993/10/10 | 5京都2 | 京都記念(G2) | 10ト | 1 | 1着 | 1人 | 武 豊 | 59 | 芝2400 | 良 | 2.22.7 | 5-5-3-1 | (レガシーワールド) |
06/13 | 3阪神8 | 宝塚記念(G1) | 11ト | 6 | 1着 | 1人 | 武 豊 | 56 | 芝2200 | 良 | 2.17.7 | 3-3-2-2 | (イクノディクタス) |
04/25 | 3京都2 | 天皇賞(春)(G1) | 15ト | 14 | 2着 | 1人 | 武 豊 | 58 | 芝3200 | 良 | 3.17.5 | 3-4-2-2 | ライスシャワー |
04/04 | 2阪神4 | 大阪杯(G2) | 16ト | 13 | 1着 | 1人 | 武 豊 | 59 | 芝2000 | 良 | 2.03.3 | 4-3-1-1 | (ナイスネイチャ) |
1992/04/26 | 3京都2 | 天皇賞(春)(G1) | 14ト | 4 | 1着 | 2人 | 武 豊 | 58 | 芝3200 | 良 | 3.20.0 | 4-3-1-1 | (カミノクレッセ) |
03/15 | 1阪神6 | 阪神大賞典(G2) | 6ト | 4 | 1着 | 1人 | 武 豊 | 59 | 芝3000 | 稍 | 3.13.5 | 3-3-3-2 | (カミノクレッセ) |
1991/12/22 | 5中山8 | 有馬記念(G1) | 15ト | 1 | 2着 | 1人 | 武 豊 | 57 | 芝2500 | 良 | 2.30.8 | 8-8-8-4 | ダイユウサク |
11/24 | 5東京8 | ジャパンカップ(G1) | 15ト | 5 | 4着 | 1人 | 武 豊 | 57 | 芝2400 | 良 | 2.25.3 | 5-6-5-4 | ゴールデンフェザント |
10/27 | 4東京8 | 天皇賞(秋)(G1) | 18ト | 13 | 18着 | 1人 | 武 豊 | 58 | 芝2000 | 不 | 2.02.9 | 3-2-2-2 | プレクラス二― |
10/06 | 6京都2 | 京都大賞典(G2) | 7ト | 4 | 1着 | 1人 | 武 豊 | 59 | 芝2400 | 良 | 2.26.5 | 4-3-2-2 | (メイショウビトリア) |
06/09 | 5京都8 | 宝塚記念(G1) | 10ト | 10 | 2着 | 1人 | 武 豊 | 56 | 芝2200 | 良 | 2.13.8 | 4-5-4-4 | メジロライアン |
04/28 | 4京都4 | 天皇賞(春)(G1) | 18ト | 15 | 1着 | 1人 | 武 豊 | 58 | 芝3200 | 良 | 3.18.8 | 7-5-4-3 | (ミスターアダムス) |
03/10 | 1中京6 | 阪神大賞典(G2) | 9ト | 4 | 1着 | 1人 | 武 豊 | 58 | 芝3000 | 良 | 3.07.3 | 6-4-2-2 | (ゴーサイン) |
1990/11/04 | 4京都2 | 菊花賞(G1) | 17ト | 2 | 1着 | 4人 | 内田浩 | 57 | 芝3000 | 良 | 3.06.2 | 5-5-2-2 | (ホワイトストーン) |
10/13 | 3京都3 | 嵐山S(1500万) | 9ト | 5 | 2着 | 1人 | 内田浩 | 55 | 芝3000 | 稍 | 3.06.6 | 5-5-5-5 | ミスターアダムス |
09/23 | 2函館8 | 大沼S(900万) | 14ト | 12 | 1着 | 1人 | 内田浩 | 54 | 芝2000 | 不 | 2.04.5 | 4-4-2-2 | (トウショウアイ) |
09/16 | 2函館6 | 木古内特別(500万) | 8ト | 4 | 1着 | 1人 | 内田浩 | 55 | ダ1700 | 重 | 1.47.3 | 1-1-1-1 | (リキサンロイヤル) |
09/02 | 2函館2 | 渡島特別(500万) | 10ト | 8 | 2着 | 1人 | 内田浩 | 55 | ダ1700 | 良 | 1.46.6 | 2-2-1-1 | マンジュデンカブト |
05/12 | 2京都7 | あやめ賞(500万) | 15ト | 3 | 3着 | 1人 | 村 本 | 55 | 芝2200 | 良 | 2.17.5 | 2-2-2-3 | ホウユウロイヤル |
02/25 | 2阪神2 | ゆきやなぎ賞(500万) | 13ト | 6 | 2着 | 1人 | 村 本 | 55 | 芝2000 | 重 | 2.04.6 | 6-7-2-1 | シンボリデーバ |
02/03 | 1阪神3 | 新馬 | 10ト | 6 | 1着 | 2人 | 村 本 | 55 | ダ1700 | 不 | 1.47.7 | 2-2-2-2 | (ハギノレジェンド) |